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サステナビリティ 社長メッセージ

きめ細かな対応力を核に
お客様ニーズを先取りする企業へ進化する
代表取締役社長CEO 細野幹人の写真

代表取締役社長CEO 細野幹人

細野幹人の署名

きめ細かな対応力による独自のビジネスモデル

事業環境認識と業績V字回復 ― 経営者としてのこれまで

当社グループは、2025年度に業績のV字回復を果たすことができました。前々期には期中で3回の業績予想の下方修正を余儀なくされ、私自身も需要変動に対するスピード感の不足を大きな課題と捉えていましたが、この1年あまりでエレクトロニクス関連、とりわけ生成AIサーバー向け半導体製造装置の需要が急拡大し、潮目は大きく変わりました。事実、中期経営計画(以下、中計)2026の最終年度にあたる2026年度は第1四半期の決算時に業績予想を上方修正し、通期予想として売上高800億円、営業利益115億円、経常利益117億円、親会社株主に帰属する当期純利益95億円と、売上高、各利益とも過去最高の水準、ROEも11.0%を見込んでいます。これは中計見直し後の目標(営業利益65億円以上、ROE8%以上)を大きく上回る水準であり、現在、通期での着実な達成に向けて各施策に精力的に取り組んでいます。ただし、依然として中東情勢をはじめとした地政学リスクや通商政策の不確実性は今後も注視が必要であり、決して楽観はしていません。

私は2025年4月に代表取締役社長に就任以降、激しい事業環境の変化の中で会社のトップとして経営の舵取りを担ってきました。入社後は長く営業の現場でお客様の声に耳を傾け、その後は人事総務や経営企画の仕事を通じて社内の様々な部門と向き合ってきました。社長就任から現在に至るまで、想定を上回るスピードで需要が変動し、経営判断がそのまま業績に直結することを痛感しました。営業の現場で感じてきたお客様目線と、人事総務や経営企画で培った全社を俯瞰する視点の両方を併せ持つことが、私の判断の拠り所になると考えています。

カスタマイズと戦略在庫が生む差別化

当社グループが創業以来大切にしてきた経営理念「社会に貢献する技術開発型企業」は、商標であるIKO(Innovation, Know-how, Originality)のもとで、単なる部品メーカーを超えた存在であり続けることを目指す、当社にとってのパーパス(存在意義)です。私が現場を歩く中で改めて痛感したのは、当社の強みがお客様目線でのきめ細かな対応力にあるという事実です。カスタマイズ製品は売上高の約半数を占め、カタログ規格外の寸法や精度の他、表面処理やグリースの仕様変更などの多様なご要望や、数個単位の試作品にも柔軟に対応しています。これを支えるのが、需要変動を見極めながら機動的に在庫を確保する戦略や、生産・販売・技術が一体となって難易度の高いお客様からのご要望にお応えする体制です。特に多様なご要望にきめ細かく応え続けるこの経営体制こそ、「社会に貢献する技術開発型企業」というパーパスを日々の事業活動として具現化するものであり、当社の経営理念とビジネスモデルは一体のものだと私は確信しています。

当社ではかねてより半導体業界の高いボラティリティを踏まえて、在庫戦略の強化に取り組んできました。2017~2018年にも同様の急激な需要拡大を経験しており、その教訓から生産・販売の連携を強化し、急激な需要変動に耐えうる在庫を持つ体制を整えてきたことが、今回の需要拡大局面で在庫を確実に販売へ結びつけ、前期の大幅な増収増益に繋がりました。また、半導体製造装置向けの小形の直動案内機器や、ヒューマノイドロボットの関節部に使われるクロスローラベアリングへの需要などが予想をはるかに上回るペースで増加しています。特に当社が強みを持つローラタイプの小形直動案内機器などは、高剛性・高精度を求める半導体製造装置メーカーを中心として需要が急速に高まっています。しかし、一方ではこの急激な需要拡大は新たな供給面の課題も浮き彫りにしました。国内工場の岐阜製作所では、レイアウト変更や増産投資等で生産性を高めてきましたが、この予想をはるかに上回る急激な需要増に対してフル生産の状況となり、供給が追いついていない形番が出ているのが実情です。引き続き、ベトナム(IKOトムソンベトナム)や中国(UBC蘇州)といった海外生産拠点の活用も加速し、お客様の納期に確実にお応えできる生産体制を早期に築くことが、今後の成長に繋がる最大の経営課題であると認識しています。

なお、大手軸受メーカーの経営統合や中国等新興国メーカーの台頭という競争関係が変化する中でも、当社グループの優位性は大きく揺らがないと考えています。均一な製品を自動化された工場で大量生産する大手のビジネスモデルは、幅広い品種と多様なカスタマイズに応じる当社とはビジネスモデルが異なり、半導体業界特有の急激な需要変動等への対応力という点では、当社に優位性があると考えています。また、確かに新興国メーカーも品質面で力をつけていますが、超高精度・高付加価値の領域では当社にアドバンテージがあります。むしろ半導体メモリの多層化・高積層化が進むほど、要素部品へのお客様の要求水準は上がり続けるため、こうした市場でこそ、生産・販売・技術が一体となったきめ細かな対応が他社には模倣できない差別化の源泉となり、大手企業や新興国メーカーと異なるステージでの事業機会の拡大に繋がるものと捉えています。

お客様ニーズを先取りする企業へ向けて

重点3分野への注力とグローバル体制の再構築

「IKO中期経営計画2026  Connect for Growth 」では、強い領域の集中強化とグローバル体制の再構築を基本方針に掲げ、半導体製造装置・医療機器・ロボットを重点3分野と定めています。半導体製造装置分野は前工程・後工程を問わず当社製品の採用が広がり、重点3分野の中で最も手応えが大きい領域です。また、医療機器分野は、精度と安全性が優先される手術支援ロボットなどで採用が拡大し、大手医療機器メーカーなどに欠かせないサプライヤーとなりました。更にロボット分野では、2030年に市場規模が現在の10倍以上、金額規模で十兆円超になるとも言われるヒューマノイドロボット向けの採用が急増しており、今後もコンパクトかつ高剛性という当社製品ならではの価値を発揮できるものと確信しています。各業界では技術進化が加速し、お客様の要求水準も益々高度化しており、今後もそれに対応するために人材育成や生産設備の増強と合わせて、工場自動化の推進にもスピード感を持って取り組んでいきます。

次にグローバル体制の再構築ですが、海外にR&D拠点を立ち上げました。2025年8月に中国(上海)、2026年7月にはドイツ(デュッセルドルフ)と米国(カリフォルニア州)に新設しており、今後も現地に密着した情報収集と製品開発のスピードを高めていきます。あわせて、米国のボストンに営業所を新設したことにより、高成長が期待される需要に対してリソースを集中させるほか、ソリューションビジネス統括部を独立した組織とし、高度化する半導体製造装置向け等の要求に生産・販売・技術の各部門が一体となって対応する体制を整えました。

いずれにしても重点3分野である半導体製造装置・医療機器・ロボットは中長期的にも伸びしろが大いにあると見ています。また、更にこの重点業種への対応で培った信頼と技術をグローバルに他の分野へ展開することも、次の成長の鍵となると考えます。

提案型営業と付加価値の追求

当社グループが今後目指すのは、これまでの「お客様ニーズに柔軟に対応する企業」から、次期中計でもテーマとしていきたいと考えている「お客様のニーズを先取りし、社会の変化をリードする企業」への進化です。具体的には、お客様目線を強く意識して、今後お客様がどのような機械や装置を世の中に出したいのかを迅速に察知し、必要な要素部品をタイムリーに提案し、時には共同開発しながら具体化していくことを目指していきます。他社にもある製品を安価に供給するのではなく、当社にしかできない新製品やカスタマイズ対応、サービスを迅速に提供し、お客様から真っ先に相談される存在であり続けることこそが、付加価値向上に見合う対価を得て、収益力を高める道だと考えています。そのために、開発部門に対してはお客様が「こんな製品が世の中にあったんだね。是非とも使ってみたい」と言っていただけるよう、「世の中にないものを開発してほしい」と繰り返し伝えています。要素部品メーカーという、いわば黒子的な存在の当社ですが、中長期にわたり「要素部品は日本トムソンでなければ困る」と言われるような必要不可欠な存在となり、社会をリードする企業へ進化を遂げたいと考えています。

企業文化の進化と資本市場に対する責任

現場対話による企業文化の浸透とガバナンス改革

こうした持続的な成長の基盤となるのが、当社グループが創業から受け継いできた「誠実かつ真摯に取り組む」企業文化です。現在もそうですが、社長就任後1年以上かけて、国内外の事業所を積極的に訪問し、役職を問わず社員と直接対話を重ねて、営業担当者のお客様訪問にも積極的に参加してきました。中国・広州の拠点では、訪問にあたり事前に担当者自らが私に対し、「採用事例のプレゼンテーションをさせてほしい」と申し出て、3時間の予定枠を超えるほど熱心に現状と課題を語ってくれたことや、米国でも各拠点の社員が一斉に集った販売戦略や事例発表会に参加した際など、その他の国も含め世界各地において社員の能動的な姿勢の変化を実感しています。こうした対話を通じて、現場に根強くあった納期対応の改善や新製品の拡充への要望がどこまで進捗しているのかを確認し、経営会議での増産体制の議論や、新製品開発の後押しに反映してきました。なお、企業文化の浸透度を高めていくことは非常に重要なことですが、私としてはグローバルでかなり浸透化は進んできたとの感覚があり、社員の多くが会社と同じ方向を向いていると受け止めています。ただし個々の課題の解決には時間を要するものも多くあり、今後も現場を回り、生の声を経営に活かしながら更なる企業文化の浸透を図ることで、社員一人ひとりが高いモチベーションで働ける職場環境を築いていきたいと思います。

また、当社グループは、事業活動を通じて持続的に企業価値を高めるため、6つのマテリアリティ(重要課題)を特定し、ESGに関する取り組みも積極的に推進しています。ガバナンス面では、2025年6月の監査等委員会設置会社への移行から1年以上が経ちました。社外取締役の皆様からも執行と監督の境界を意識させないほど率直なご意見をいただき、ガバナンス体制は強化されたと実感しています。2026年4月からはCEOを中心とするCxO体制を導入し、会長との共同代表体制を解消して、私自身が代表取締役社長CEOとして指揮命令系統を一本化しました。

また、環境面ではGHG排出量について2030年度までにScope1・2で2022年度比42%以上の削減を掲げてSBT認定を取得したほか、バーチャルPPAの導入による再生可能エネルギーの調達を進めるなど、環境関連の取り組みと情報開示が評価されて環境省主催のESGファイナンス・アワード・ジャパンで「環境サステナブル企業」として初めて選出されました。このほか、CDPスコアやESG投資指数の構成銘柄への選定など第三者からの評価も向上しています。これらは環境・社会・ガバナンスの各分野における地道な積み重ねの成果であり、中長期的な企業価値向上の土台となっています。

資本市場との対話と次の10年に向けた責任

株主・投資家の皆様との対話では、資本コストと株価を意識した経営を重要課題と位置付けて、過去にいただいたご意見からDOE(自己資本配当率)を配当下限の目安とする株主還元方針などに反映しました。実際に、2025年度は当初の公表予想を上回る1株当たり29.5円への増配を行い、2026年度は32円への増配と16億円規模の自己株式取得など、株主還元の充実も図っています。また、この1年あまりで当社の株価は大きく上昇しており、2030年ビジョンに掲げていた時価総額1,000億円以上の目標も前倒しで達成しました。以前は自動車部品に強く連動するベアリングメーカーと見られがちでしたが、実際に輸送機器向けの売上高構成比はそれほど高くなく、半導体製造装置などエレクトロニクス関連の比率が高いことや、成長が期待されるヒューマノイドロボット向けにも部品供給していることなどから、株主・投資家の皆様からAI関連企業としても認知され始め、現在の資本市場の評価に繋がっていると受け止めています。

今後、私が経営者として果たすべき責任は、5年後、10年後に当社グループが着実に成長を遂げていると数字で示すことですが、その成長は長い射程の途中にある通過点だと捉えています。1950年の設立から76年、事業規模の拡大のみを追い求めるのではなく、要素部品メーカーとしての本分である高付加価値の製品とサービスに徹底的にこだわっていきます。そして、従業員が誇りを持ち、社外からも「良い会社だ」と評価される企業であり続け、その積み重ねの先に社長就任時に掲げた「100年後もこの会社で働きたい」と思ってもらえるような会社を築くことこそ、私に課された最大の使命と考えています。株主資本コスト(約9%)を上回るROEの実現やIKO VISION 2030に掲げる売上高1,000億円以上、営業利益150億円以上、ROE10%以上という目標を、現場の生きた声と技術力を土台に一歩ずつ具体化していきます。なお、次年度から始まる新たな中期経営計画も、この考え方を基に現在策定を進めているところです。ステークホルダーの皆様におかれましては、今後も変わらぬご理解とご支援を賜りますよう、お願い申し上げます。

※本メッセージは、2026年10月発行 統合報告書2026 社長メッセージより転載しています。




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