sustainability

サステナビリティ トップメッセージ

誠実を旨とする企業文化のもと
IKOブランドの価値向上と社会課題の解決に取り組み全てのステークホルダーから信頼される企業グループを創造してまいります
トップメッセージ

代表取締役社長

宮地茂樹

社員一人ひとりの誠実な姿勢が信用・信頼と高品質の源泉

当社に入社して特に印象に残ったのは、真面目で誠実なひとが多いということでした。社員一人ひとりが誠実に仕事に向き合い、一生懸命に課題に取り組んでいる。この社員の仕事に対するひたむきな姿勢が、日本トムソンという会社に対するお客さまや社会からの信用・信頼に繋がっており、当社製品の高い品質も担保していると思います。

誠実に仕事に向き合うことを大切にする社風や企業文化こそ当社グループの優位性の基盤であり、次世代へ伝えていくべき財産だと考えています。

これまでの経営で重視してきたこと

私が2010年に常務取締役経営企画部長に就任した際、最初に手掛けた大きな仕事は中期経営計画の策定でした。当社製品の需要はボラティリティが非常に高く、先が見通しづらい事業環境下にあることから、それまで一度も中期経営計画を立案したことがありませんでした。しかし、当社グループが持続的な成長を追求するためには、将来の目指す姿を役職員全員が理解し、共有して力を結集することが欠かせません。また長期ビジョンの実現プロセスとして、3か年から5か年の中期経営計画を策定し、その取り組みを積み重ねていくことが必要です。幸い、私の考えに当時の社長や専務取締役も賛同してくださり、3か年の第1次中期経営計画の策定に着手することになりました。計画の立案にあたり、役員や社員間で当社グループの目指すべき今後の在り方や強みについて徹底的に議論したことで、部門の垣根を越えた社員の一体感が醸成されました。また会社が大切にしている理念や価値観を世界各地で働くグループ社員の間で共有できたことも、当時を振り返ると、大きな成果であったと思います。

日本トムソンの目指す姿

日本トムソンの目指す姿

私たちは、これまで第1次中期経営計画の策定から、一貫して経営理念の再検討と将来ビジョンの設計という当社グループにおける経営の根幹に関わるところから長い時間をかけて議論を重ねてきました。

まず、経営理念については、議論を深めるほどに「社会に貢献する技術開発型企業」という旧来の理念が、当社グループの存在価値を的確に表現していることに気づきました。それならば、先人たちが代々継承し、行動の指針として大切にしてきたこの旗印をもう一度、未来を切り拓くための旗印として推し進めていこうと決めました。なお、当社グループの「社会に貢献する技術開発型企業」という経営理念の具現化を支えているのは、ブランド名を構成するI=Innovation(革新的な思考と行動)、K=Know-how(技術と情報の蓄積・活用)、O=Originality(創造性の高い製品開発)です。当社は1963年にIKOを商標登録して以来、このブランドを大切に育ててきました。IKOは、国内で初めてニードルベアリングの自社開発に成功した卓越した技術力と高い品質の象徴でもあり、現在では、半導体製造装置や工作機械などあらゆる機械産業において世界的ブランドとして認知され、信頼の証として高く評価されています。

また、当社は1950年の設立以来、様々なステークホルダーのご支援のもとで事業を続けてまいりました。そうした経緯を踏まえて、お客さま、株主さま、取引先さま、社員、競合先の5つのステークホルダーを設定し、それぞれの皆さまにとってどのような会社でありたいかを整理しました。お客さまには信頼され期待され真っ先に相談される会社、株主や投資家の皆さまには企業価値を持続的に向上できる会社、取引先の皆さまからは永続的に共存共栄できる会社、社員からは仕事を通して自己実現ができ夢を持ち続けられる会社、競合企業の方からは特定分野でNo.1競争力のある会社でありたいことを再認識しました。そして、経営計画や事業戦略の立案と実行においては、常にステークホルダーの目線に立って何が最善であるかを考え、行動することが大切であることを改めて確認し、それを「中期経営計画」の策定の基軸に据えてきました。

デジタルシフトやAI、IoTの進化、SDGsをはじめとするサステナビリティを巡る社会的要請など、今まさにグローバル社会は歴史的な変動期を迎えています。こうした時代こそ、当社グループが培ってきた企業文化を堅持しつつ、中期経営計画の着実な推進を通じて一歩ずつ次のステップを目指していくことが肝要です。改めましてIKOブランドに託した企業理念を旗印として、「中期経営計画2023」で掲げた諸目標の達成に邁進し、ありたい姿の具現化に取り組んでいきたいと決意しています。

「中期経営計画2023~深化・挑戦・変革~」

第1次から第3次まで、それぞれ3か年の中期経営計画を推進したのち、2021年5月に2024年3月期を最終年度とする「中期経営計画2023」を発表しました。「中期経営計画2023」が第1次から第3次までの中期経営計画と異なっているのは、若手社員の意見や想いを数多く取り込んだ点にあると言えるでしょう。経営陣だけでなく、日本トムソンの今後を担っていく部長や課長などの中堅社員にも参画してもらい、当社グループのあるべき姿やビジョンを実現していくための取り組みについて活発に議論してもらいました。若手社員の会社に対する強い想いや、清新な発想を戦略・施策として具体化したことにより、幅広い世代に訴求する計画になったと自負しています。

計画の策定に当たっては、まず「お客様と一番につながり価値を共に創りだす『技術開発型企業』に 〜サステナブルな未来を共創する〜」(2030年度に連結売上高1,000億円以上、営業利益150億円以上、ROE10%以上)を「IKO VISION 2030」として定め、そこからバックキャストするかたちで、2024年3月までの3か年の取り組み方針を決定しました。基本戦略としては「『深化』『挑戦』『変革』による価値向上、価値共創の実現」を掲げています。今を強くする既存ビジネスの更なる深掘り(深化)と未来を創る新技術・新領域の開拓(挑戦)、そして強靱な経営基盤を構築する行動変革・組織能力変革・デジタル変革(変革)を通じて、価値創出の取り組みを加速してまいります。

計数目標については、最終年度の目標値を設定せず、対象3か年の平均値として営業利益70億円、ROE7%以上(いずれも2022年5月の上方修正値)を目指すこととしました。私たちが軸足を置くベアリング業界は需給の変動が激しく、単年度の業績に拘泥することは得策ではありません。中長期的視点で成長し続け、かつ安定した収益を確保することの重要性を鑑みて、営業利益とROEの3か年平均値をKPIとして設定しました。

なお、「中期経営計画2023」においても世界中のグループ社員に対して、ブランド名IKOに込められた意味とその価値をいま一度捉えなおし、日々の指針とすることを強く促しています。そして、新たな挑戦を通じてIKOブランドの更なる価値向上を図ることで、当社グループは次なる成長ステージに踏み出すことが可能になると考えています。

当社グループのマテリアリティ

当社グループは、これまで様々な新技術・新製品を社会に投入し、世界中の産業発展と人々の豊かなくらしの実現に貢献してきました。例えば、当社が世界で初めて製品化に成功したローラタイプの直動案内機器は、半導体製造装置や工作機械の高精度化・小型化に大きく寄与しています。また、潤滑部品を内蔵したCルーブリニアウェイはオイルミニマムで長期メンテナンスフリーを実現する地球環境に優しい製品です。当社グループはこうした保有技術・製品の高度化や経営体制の強化を通じて、社会・経済・環境などあらゆる面でのサステナビリティに貢献していくことを重要な使命と捉えています。

そこで、「中期経営計画2023」の策定と合わせて、当社グループのマテリアリティを次の6テーマに整理しました。

  1. ①豊かな地球環境の実現に向けた企業活動の推進
  2. ②コア技術を活かした技術革新への貢献
  3. ③社会が求める商品提供による社会発展への貢献
  4. ④人々の健やか・安全・安心なくらしの実現
  5. ⑤多様な人材が活躍でき、働きがいのある社会の実現
  6. ⑥コンプライアンス・ガバナンスの継続的向上

これらのマテリアリティの実現を追求していく上で、特に注力すべき課題は、「品質の更なる向上」、「人材の育成と活用」、そして「コーポレート・ガバナンス強化」の3点だと考えています。

品質については、高い製品品質を維持向上させ、お客さまに提供することはもちろん、開発、生産、営業からアフターサービスに至るまで、あらゆる領域において高品質を追求しています。当社社員の真摯に仕事に向き合う姿勢や誠実なお客さま対応も広義の品質と言えるかもしれません。今後も、信用と信頼の基礎である優れた品質に更に磨きをかけてまいります。

人材に関しては、一生懸命に仕事に取り組む社員の存在こそ、当社グループの持続的な成長を牽引する最大の原動力だと捉えています。引き続き、人材採用における多様性の確保や女性社員の活躍支援に加え、果敢なチャレンジを促す環境整備と風土づくりなど、様々な取り組みを通じて組織の活性化を図ると同時に、当社グループの将来を担う人材の育成に注力していく方針です。

コーポレート・ガバナンスについては、これまで経営の監督機能の強化や意思決定の適正化・迅速化に継続的に取り組んできました。取締役会メンバー9名のうち3名は社外取締役であり、2022年6月の株主総会において、女性の独立社外取締役が選任され、就任しました。また、当社がアメリカ、ヨーロッパ、中国、ベトナムなどに多数のローカルスタッフを擁し、グローバルに事業を展開している現状を踏まえ、外国籍の社員を経営陣として起用するなど、更なる多様性を確保していきたいと考えています。ガバナンスはあらゆる企業活動の基盤です。これからも取締役会の実効性向上に努め、継続的なガバナンス体制の強化を図っていきます。

リスクを取らなければ成長はない、常にチャレンジし続けることが重要

Cルーブリニアウェイなどの主力製品は当社グループの収益に大きく貢献していますが、供給能力にも制約があるため、足元ではお客さまのご要望に完全にはお応えできておりません。また既存の製品群のなかにも、新たな付加価値をつけることで今以上の収益貢献を期待できるものが多々あります。中長期の視点に立って、設備投資や新製品開発、あるいは既存製品のリニューアルを適時的確に実行することが必要でしょう。私はグループ社員にチャレンジの大切さを説いていますが、チャレンジが必要なのはマネジメントも同様です。しっかりとガバナンスを効かせたうえで、リスクを取るところは取る、そうした果断な経営を進めていく考えです。

新型コロナウイルス感染症の再拡大やロシアのウクライナ侵攻に伴う地政学的リスクの高まりなど、世界の経済社会情勢は常に揺れ動いています。また、すでにお話ししたように当社製品の需要はボラティリティの非常に高い環境下にあることから、外部環境の変化や短中期の市場変動に備えて、一定の財務余力を確保しておくことも必要です。私は今後も、成長投資と財務健全性の攻守両面を押さえた機動的な舵取りを行っていきます。

グループの総力を結集し、企業価値の最大化を追求

当社は、株主の皆さまに対する利益還元を重要な経営課題のひとつに位置付け、安定配当の継続と内部留保資金の充実を両立することに心を砕いています。2022年3月期は1株当たり13円の年間配当を実施し、連結配当性向は22.3%でした。また、2023年3月期は1株当たり6円増配の年間19円の配当を実施し、連結配当性向は18.1%でした。

好業績を達成した年度だけでご覧になると配当性向が低いように思われるかもしれません。しかし、外部環境の悪化により業績が低迷した年度でも一定の配当を実施しているように、当社としては安定的な配当を続けることこそ、株主さまのご支援にお応えする最善の方法だと信じています。中長期の平均的な配当性向と成長投資による株主価値の最大化に注目していただけますと幸いです。

当社グループは、お客さま、株主・投資家の皆さま、お取引先、社員、競合先など、あらゆるステークホルダーから信頼される企業グループであり続けるため、目指すべき長期ビジョンの実現を見据えた中期経営計画の確かな進捗に経営資源を積極投入し、企業価値の最大化を追求してまいります。ステークホルダーの皆さまにおかれましては、これまでと同様のご理解とご支援を賜りますようお願い申し上げます。




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