sustainability

サステナビリティ トップメッセージ

高品質の製品をお客様にお届けし
成長を通じてステークホルダーの皆様に報いる
トップメッセージ

代表取締役社長

宮地茂樹

日本トムソンが提供する価値の本質

日本トムソンは、73年の歴史を持つ技術開発型企業です。これまでの当社グループの成長を支えてきたもの、お客様に対して提供してきた価値の本質は、製品の「品質」です。私たちでなければ提供できないような、特徴のある、かつ高品質の製品をお客様にお届けし、安心してお使いいただくことが当社グループの使命であり、それができるところに当社グループの存在意義があります。

当社グループの製品は、IKOというブランド名で提供しています。IKOは、革新的で「Innovation」、高度な技術に立脚し「Know-how」、創造性に富む「Originality」という3つの信念の頭文字をとったものです。この言葉を胸にモノ創りに打ち込んできたことで、当社グループの高度な品質と高い付加価値は産業界から高く評価を受け続けています。IKOブランドの価値は、お客様の期待を超えるものであるべきという考え方に対して、経営陣のみならず、当社グループの全ての社員が強く共感しているところに、当社グループの強さがあると考えています。国内外のどの生産拠点、営業拠点にあっても、この意識にぶれはありません。当社グループでは2017年に「ブランドイメージ向上委員会」を立ち上げ、それ以降グループ全体でブランド価値の向上に向けた議論を重ねていますが、ここでも当社製品のブランド価値の本質は「品質」にあると結論付けています。

今後は、こうしたIKO ブランドの価値を、もっと広く知っていただかなければなりません。より多くのお客様に当社製品を使っていただき、その価値を実感していただいたうえで、当社製品を組み込んだ製品で、お客様自身が技術革新を起こし、お客様の価値向上、更にその先の、産業全体の価値向上に貢献したいと考えています。

成長の源泉としての「人」と「組織」

人の価値を高める

高品質を生みだし、更なる成長に繋げていくために必要不可欠な経営資源は、当社グループの人材にほかなりません。将来に向けた布石を打つためには、それぞれの社員から出されるユニークなアイデアや行動力が必要です。私は社長として、社員の力を高めるための経営資源の投入や施策に最大限の力を注ぎ、社員の成長を全面的にバックアップしていく考えです。私は、人の成長こそが当社グループの成長だと考えており、当社グループの成長スピードを上げていくために、社員一人ひとりが、今まで以上にスピード感を持って成長を遂げられるような環境を整備し、経営資源を投入していく考えです。当社グループではこれまで、新しい人事制度を導入するなど、ここ数年で社員のやる気や成長を支援する仕組みを強化してきましたが、今後の課題は、社員一人ひとりの成長を支える組織風土をつくりあげていくことです。そのためにはまず、マネジメント層の意識改革が不可欠です。当社グループは今でも部下の面倒見がいい社員が多いと思いますが、これまで以上に個々の社員としっかり向き合い、それぞれの社員のことを思い、一段の成長のためには何が必要かといった点について話し合い、ともに答えを探していくことが大切です。またマネジメント層自身の成長のためには、上司から部下だけでなく、部下から上司に積極的に進言できる風土づくりや仕組みの導入も必要と考えています。

加えて、人材の面であらためてその重要性を痛感しているのが多様性です。当社グループの組織や風土しか知らない人間だけで組織運営をしていては、新たな発想も生まれにくく、成長を加速させることもままなりません。女性の知、他社の知、日本以外の知から学びを得る機会を増やすことが必要です。多様性は取締役会においても重要で、昨年は女性の社外取締役にご就任いただきましたが、外国人の役員はまだいません。ここはなるべく早く、グローバルスタンダードに近づきたいと考えています。

近年は「人的資本」という言葉がよく使われるようになりました。人材への投資を「費用」として捉えず、企業価値を高めるための「投資」として捉えることの重要性が叫ばれています。当社グループにおいても、更なる成長の原動力となる人材への投資を継続的に行っていく必要がありますが、そのためにはまず、十分な原資を確保するための稼ぐ力を高めることが肝要です。こうした意識を持つことが、当社グループらしい人的資本経営に繋がるのだと思います。

組織を強くする

個々の人材の力を束ね、大きな力にしていくためには、組織を強くすることが必要です。

当社グループの今後の更なる成長のためには、生産能力の強化・効率化が喫緊の課題であり、2023年4月に生産部門において大きな組織変更を実施しました。生産部門を管掌する秀島専務取締役の指揮のもとで、新しい生産組織のアイデアについて、現場の幹部層を交えて繰り返し議論を重ね、生産現場に変革を起こすための組織の構想を固めていきました。指揮をとった秀島氏は当社の社外取締役を3年間務めていただいた方で、2022年6月に当社の専務取締役として招き入れた方です。新しい組織については現場の意見を多く取り入れたこともあり、社員のモチベーションは非常に高まっています。秀島氏には、大変良い仕事をしていただいたと感謝しています。

組織全体を強化していくうえでは、横の連携をつくっていくことが大切です。我々のような製造業では、生産部門や技術部門、営業部門、管理部門がそれぞれしっかり機能することに加え、横の連携をうまく働かせることが大切です。それができなければ、お客様のご要望に対して、適切に貢献できないからです。このことは社内でもよく認識されており、部門や組織を超えた連携を重んじる文化がこの10年ほどで培われてきたと感じています。現在取り組んでいる中期経営計画(以下、中計)においても、 One-Team IKO (部門や組織を超えた、お客様目線での組織力の最大化)を掲げ、強靭な経営基盤の強化に向けて取り組んでいるところです。

横の連携を支援する取り組みも進めています。当社グループでは、それぞれの現場で抱えている課題・問題を共有し、解決策を検討する「中計トップレビュー」を実施しています。他部門が直面している課題・問題に触れ、一緒に解決策を導き出すことで、自部門の新たな気付きを創出できる場にもなっています。この結果、横の連携の強化に繋がっています。

中期経営計画と、更にその先の長期ビジョンの実現が重要

「人」と「組織」の更なる強化に取り組みながら、当社グループは新たな成長に向けて動き出しています。現在は「中期経営計画2023 ~深化・挑戦・変革~」に、グループ一丸となって取り組んでいます。この中計は、2030年における当社グループのあるべき姿を描いた「IKO VISION 2030」からバックキャストする形で策定しており、「『深化』『挑戦』『変革』による価値向上、価値共創の実現」を基本方針としています。これまでの中計と本中計の決定的な違いは、策定に際して、次代を担う部長、課長、中堅社員が深く関わっている点です。「深化」「挑戦」「変革」という言葉は、上述の幹部社員、幹部候補社員が、日々の業務の中で、自らが率先して起こすべきアクションを示しています。中計のもとで、自分たちが強みを発揮できる事業領域、強みのある製品をしっかり認識したうえで、そこに対して更に磨きをかけるため、調査・研究を徹底的に行い、集中的に投資をし、自らの行動も変えていくことへの強い意志が込められているといえます。

中計の進捗としては、2年目を終えた時点で、およそ7合目まで到達していると見ています。ボラティリティの高い市場環境にも対応できる筋肉質な事業体質に生まれ変わることを目指して取り組んできた結果、2023年3月期(当期)は、94億円の営業利益と11.0%のROEを実現しました。当期は、原材料価格の高騰など厳しい収益環境にありましたが、お客様にご協力をいただきながら適正な価格を維持することが出来た背景は、やはりIKOブランドの価値に対するお客様からの高い評価と、お客様との強固な信頼関係にあると考えています。例えば、中計のもとで取り組んでいる「マンツーマンプレゼンテーション」は、まさにお客様との強固な信頼関係がなければできないことで話すら聞いてもらえません。また、同じく「業種別プレゼンテーション」にも力を入れていますが、特定業種のお客様が直面する悩みをしっかりと把握できているからこそ、お客様の琴線に触れる提案をすることができるのです。

一方で、長期ビジョン「IKO VISION 2030」の実現に向けてはまだまだ課題が残っています。これまで進めてきた収益力の強化、効率性の更なる向上に加え、成長投資や株主還元などの財務戦略の強化も進めていきます。

日本トムソンの目指す姿

サステナブル経営への取り組み

未来に向けた力強い成長を持続させるために、経営体制をより一層強化し、サステナブル経営に引き続き力を注ぎます。

その根幹となるのが健全なコーポレート・ガバナンスです。先ほども触れましたが、取締役会については、9名の取締役のうち3名が社外取締役となっています。3名の社外取締役には、各専門分野での深い見識に基づき有益な助言をいただいています。また、2022年からは、当社初の女性社外取締役として野田取締役を迎え、女性の立場からのご発言も含め、多くのご助言・ご指導をいただいています。

また、サステナブル経営の推進としては「サステナビリティ基本方針」のもと、取締役会に直結したサステナビリティ委員会において、サステナビリティに関する様々な課題について議論し、その結果を取締役会に定期的に報告しています。また、サステナビリティ基本方針に沿ったマテリアリティ(重要課題)として、現在は6つのテーマ、16項目の取組課題を特定し、これに取り組んでいます。

当社グループの事業は、様々なステークホルダーの支えがあってはじめて成り立つものと認識しており、当社グループでは「お客様」「株主様」「取引先様」「社員」「競合先」という5つのステークホルダーにとって、どのような会社でありたいかを整理し、中計の策定の際に、これを基軸に据えました。競合先もステークホルダーとして、当社グループは「特定分野でNo.1競争力のある会社」でありたいと考えています。今後は、より強くなる戦略を策定し、更に強固な領域・製品を築き上げていきます。

人と人との繋がりを大切にして、成長に繋げる

当社グループに対する資本市場からの評価を見る限り、投資家の皆様に対するご説明がまだまだ足りていないと痛感します。今後は当社グループの成長ストーリーをしっかりご理解いただくこと、また獲得した利益に対する積極的な株主還元など、キャッシュアロケーションについてご理解いただくことが重要だと考えています。

私は、人と人との繋がりを大切にすることを常日頃から心がけています。これは経営者としての職務を遂行するうえでも、私生活でも同じであり、相手を思いやること、相手のためになることを考え、行動することを大事にしています。中計に出てくる「One-Team IKO」という言葉にも、やはり人と人との繋がりの大切さが込められています。

これまでの当社グループの歴史の中では、お客様に対して、また自分の仕事に対して「真面目で、誠実に、一生懸命に尽くす」文化が培われていると思います。「人」と「組織」の両面における当社グループの強み、当社製品の高い品質は、こうした真面目な企業文化から生み出されていると感じています。

当社グループはこれからも、高品質・高精度な製品でお客様を支え続けることで、持続的な成長を実現していく所存です。ステークホルダーの皆様におかれましては、より一層のご理解とご支援を賜りますよう、お願い申し上げます。


※本メッセージは2023年10月発行の統合報告書トップメッセージより転載しています。




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