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IKOエピソード 次世代技術を支えるIKO製品 vol.3

工作機械に半導体製造装置・医療用機器、駅のホームドアにも!
IKOの直動案内機器が未来の社会に欠かせない理由


IKO製品を通して、ベアリングの仕組みや役割を解説する本シリーズでは、前回、IKOが国内で初めて開発に成功した「ニードルベアリング」を紹介しました。今回取り上げる「直動案内機器」は、機械装置の滑らかな直線運動をサポートするもので、多くの精密機器の「精度」を左右する位置決め機構に欠かせない重要部品です。中でもその精度と品質の高さから多くの最先端精密機器に採用されているIKOの直動案内シリーズの特長に迫ります。

「直線運動」を滑らかにする「案内機器」

「直動案内機器」とは、その名のとおり、主に機械装置の「直線運動」における摩擦を減らし、滑らかな動作を実現する機械要素部品です。回転形のベアリングを直線運動に応用したもので、1940年代に米国で考案されたものが始まりといわれています。直動案内機器を機械装置に組み込むことにより、高い精度を実現するとともに精度出しに要する工数を大幅に削減することができます。さらに後述する転がり案内方式の直動案内機器は寿命の予測が可能なため、予期しない装置の故障が発生しにくいのもメリットの一つです。

直動案内には大きく分けて、荷重を平坦な面で受け案内部に油や樹脂を用いてモノを滑らせる「滑り案内」、転動体を用いてモノを動かす「転がり案内」、加圧された流体でモノを浮かせつつ案内する「静圧案内」の3つの方式があります。

IKOで展開しているのは、「転がり案内」方式の直動案内シリーズです。他の案内方式と比べると、「微小な移動にも精度良く対応できる」「動力を小形化できるため省エネ化に貢献できる」「構造が簡素なグリース潤滑で十分なため、メンテナンスが容易」などといった特長があります。

中でも汎用性の高い「レール案内形式」の「IKOリニアローラウェイスーパーX(LRX)」を例に挙げて直動案内機器の構造を図解したものが〈図1〉になります。軌道となるトラックレールの上をスライドユニットが走行することで直線運動を実現するという仕組みで、このスライドユニットの中には、ボール(鋼球)やローラ(ころ)などの転動体があり、これがレールの上を転がることで摩擦を低減します。


リニアローラウェイスーパーXの構造図解
〈図1〉機械装置の直線運動をサポートするIKOリニアローラウェイスーパーX(LRX)の構造図解

IKOの直動案内機器は、搭載物を真っ直ぐ移動させ、所定の位置に精度よく停止させるために用いられることが多く、工作機械や半導体製造装置、医療用機器といった最先端精密機械装置に加え、近年増加している駅のホームドアなど身近な機械にも欠かせない重要部品となっています〈図2〉。


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〈図2〉工作機械(マシニングセンタ)やホームドアなどの可動部に使用されるIKOの直道案内機器

新たな価値を提供し続け、常に業界をリードしてきたIKOの直動案内機器

そんなIKOの直動案内機器の歴史は、1978年に転動体にボールを用いた「リニアウェイ(LW)」を開発したところから始まります。83年にはボールの代わりにローラを用いた「リニアローラウェイ」を開発すると、90年代にはこのLRWの性能を極限まで高めた「リニアローラウェイスーパーX」の開発に成功。他社製のローラタイプ製品が市場に出始めた2000年代初頭には、ベアリングの大きな課題の一つである給脂を解決したメンテナンスフリーシリーズ「Cルーブ」を2002年にリリースするなど、常に時代に先駆けた製品を供給してきました。

その後も、セラミックス製ボールを採用し、高剛性・高速性能に優れた「ハイブリッドCルーブリニアウェイL」〈写真1〉、世界初の液晶潤滑剤を採用し、優れた潤滑耐久性と発塵性を備えた「液晶潤滑リニアローラウェイ」、さらなる高精度要求に対応した「マスターグレード」など、新たな価値を持つ新製品を次々に発表。現在は「走行振れゼロ」という低脈動を目指すべく次世代リニアローラウェイの開発に取り組んでいます。


ハイブリッドCルーブリニアウェイ
〈写真1〉セラミック製ボールを採用し高剛性・高速性能に優れた「ハイブリッドCルーブリニアウェイ」

近年開発した製品の中では、「マイクロリニアウェイL(LWLF2)」〈写真2〉も反響の大きかった製品の一つです。独自のスモールサイジング技術によって生み出された世界最小クラスの製品で、従来品では難しかった狭小部への取り付けが可能です。さらにIKO独自の内部構造により極めて小形でありながら方向や大きさが変わる荷重や複合荷重を受けても高い精度と剛性を実現しています。また、製造工程において治具の形状やワークの配置などを見直したことで歩留まりの改善とコストダウンを可能にしました。

マイクロリニアウェイL
〈写真2〉世界最小クラスの超小形製品「マイクロリニアウェイL(LWLF2)」

お客様目線に立った提案型の製品設計により、要望以上の価値を提供

このような新たな価値をもつ製品はいかに生まれてきたのでしょうか。IKOでは、直動案内機器に限らず、お客様目線に立って製品設計を行うことが特長の一つです。要求されている仕様を提供するにとどまらず、お客様が製品に何を求めているのか、その目的を果たすには要求された仕様で本当に十分か、あるいは目的を達成する上で過剰なものはないかといった部分までを必ず確認します。このようなお客様目線に立った提案型の営業・設計スタイルが製品開発に生かされるだけでなく、お客様の想像以上の価値を提供するケースも少なくありません。

例えば、新型マシニングセンタの加工能力の大幅な向上と、対応可能なワークサイズの最大化を求められたプロジェクトでは、IKO製品の中でも特に高い剛性を誇り、定格荷重も大きい「IKOリニアローラウェイスーパーX」をベースに、不要な精度管理を省略した仕様を提案。結果、先方の要求をクリアしただけでなく、精度管理が簡略化されコストダウンにもつながりました。

また、手術支援ロボットの開発プロジェクトでは、ロボットの可動域を広く取るために、アームのスリム化、コンパクト化、さらに人の腕のような滑らかな動きが求められる中、IKOは「Cルーブリニアウェイ」を採用。装置の軽量化、省スペース化の実現に、長期メンテナンスフリーという付加価値を加えたこの提案に満足いただけたのはもちろん、常にお客様に寄り添ったIKOの対応自体もご評価いただきました。

航空・宇宙領域、医療分野の発展やSDGsにも貢献できる

量産品では対応できない試作機での限定的な使用、特別な寸法や仕様を求められる特殊条件下での用途など、高い精度と多様な仕様を要求される状況でこそ真価を発揮するのがIKOの直動案内機器です。このようなIKO製品の価値は、今後、航空・宇宙領域や医療領域などさまざまな分野でさらに飛躍することが予想されています。また、「オイルミニマム」を掲げたCルーブリニアウェイはSDGsなどを見据えた環境負荷の低減ニーズなどとも非常に好相性と言えるでしょう。

EVやDXをはじめ新たな技術が日進月歩で進化し、100年に一度の変革期と言われる今、IKOの高い技術開発力と、お客様目線に立ったきめ細かな対応力が必要とされるシーンはますます増えてくるでしょう。今後もお客様に寄り添い、社会の軸となる技術開発を進めていくことで、自社の成長と社会貢献の同時達成を目指していきます。




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